私は連さんの部屋のダイニングテーブルに食事を準備し、彼の寝室に近づいた。寝室のドアは少し空いていたが、覗かずにドアをノックする。

「おはようございます。連さん、起きていらっしゃいますか」
「うーん」

声が返ってきた。

「体調、よろしくないですか?」
「んん~、ちょっと来てくれるかー?」

間延びした声で呼ばれ、私はおそるおそる連さんの寝室に足を踏み入れる。同居以来、ハウスキーパーを断ってもらい、私が二部屋分掃除をしているけれど、寝室というプライベートスペースに踏み込むのは初めてだ。
濃紺のカバーのかかったキングサイズのベッドに歩み寄る。身長の高い連さんには普通のシングルベッドでは狭いのだろう。布団をかぶり、横たわる連さんを覗き込んだ。

「連さん?」

次の瞬間腕を掴まれベッドに引っ張り込まれた。

「初子、おはよう!」

そう言って、私を胸に抱く連さん。温かな腕で包まれ、厚い胸に頬がくっつく。
私は驚愕で凍りつき、すぐに正気に戻って腕から逃れようとした。しかし、体格差、腕力差、どれをとっても敵わない。

「連さん! 私はこういうことをするために! お呼びにきたのでは!」
「あはは、そう怒るな」
「化粧が! つきますので! スーツも! どうかっ!」
「ほら、離すから、落ち着け。ちょっと悪戯したくなっただけだ」