独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

「俺にもあんなふうに笑って見せてくれ」
「連さん」
「そうだ、一緒に笑ってみよう!」
「え?」

初子がびっくりした顔になる。

「だって、お互いの『楽しい!』って顔を見ていないから、俺たちは今トラブルになっているんだろう?」
「いえ、トラブルとまでは……」
「お互い全力で笑ってみよう! 今この場で! せーの」

すると、俺の提案に初子がぷふっと吹き出した。これは、全力の笑顔ではないが、初めて見る表情だ。

「も、申し訳ありません。連さん、おかしなことをおっしゃるから……」

初子は視線をそらしてくすくす控えめに笑っている。どうも、俺の提案がツボに入ったようだ。そんなつもりはなかったんだが。

「連さんは不思議な人です。気まずくなりそうな場面で、こんな返しをされると思いませんでした」
「だって、俺は初子に笑ってほしい」

素直に口にすると、初子の頬に朱がのぼる。

「初子のあんな顔見たことなかった。俺にも向けてほしかった。気を遣った顔ばかり見ているのは嫌なんだ」
「私、そんなに表情が変わっていましたか?」
「全然違ったぞ。普段の初子は眉毛は一文字だし、表情も硬い」

思いあまって、初子の頬を指でつまんで外に引っ張った。

「ほら、笑え。笑ってくれ」
「連さん、いたいれふ」

俺の強引なやり方に、初子が困ってささやかに抗議する。
そして堪えきれないように笑った。それはちょっと間抜けで愛らしい笑顔だ。