「ヒカル様はツバサ様に十分なキッカケをお与えになられました。……あとは、ツバサ様のお心次第だと思います」

今日付き添って様子をずっと見ていたが、ツバサ様にはあと一歩"何か"が足りない気がした。その"何か"があの方の心を縛り、ずっとずっと刻が過ぎるだけで、前に進めずにいる。
もう一度、夢の配達人を目指していた頃の真っ直ぐなお気持ちを取り戻せば、きっと……。

「ーーそうだよね。信じるしか、ないよね」

「ヒカル様?」

「僕は、ツバサを信じてる。きっとあいつなら、どんな形であれ自分の道を見付けられる。
その時に全力でサポートしてあげられるように、僕も頼り甲斐のある兄でいなきゃね!」

ヒカル様は腕時計を左腕にはめると、そう言って微笑った。

信じて見守るーー。
そうだ。きっとヴァロン様がこの場に居ても、そう言っただろう。

『姉弟、みんな仲良く。どんな事があっても信じ合い、助け合える子供達に育ってほしい』

以前そう言っていたヴァロン様の事を思い出し、そのお望み通りに成長しているお姿が嬉しくて、思わず笑みが溢れた。

「そうですね。
ツバサ様ならば、きっと大丈夫です」

このご姉弟はきっと大丈夫ーー。

一緒に居ると心暖まるこの方達には、明るい未来が待っている。
私もそう、信じたいと思うのだ。