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ピピピッ!ピピピッ!ピピ……ーーカチッ!

「……。……夢、か」

枕元の目覚まし時計のアラームを止めて、俺は横になっていたベッドから上半身を起こした。
すると、頬を掠めるようにして手元に何かが落ちる。

「なるほど……。原因は、眼帯(コレ)か」

苦笑いをこぼしながら、俺は外れた眼帯をすぐに自分の左目を塞ぐように装着する。

なんでか、って?
それはさっき見た妙にリアルな夢の原因が、この左目にあるからだ。

俺の瞳は生まれつき虹彩異色症(こうさいいしょくしょう)ーオッドアイー。つまり左右の瞳の色が異なっている。
右目は髪と同じ白金色なのに対し、左目は漆黒。

オッドアイ自体は今や珍しくないし、特に俺の住んでいるこの港街は各国から様々な人が行き来する"差別のない街"として有名。
外から来た者が住人になる為には厳しい審査が必要になるが、ここでは犯罪者でもない限り、いかに髪の色や瞳の色が珍しくても白い目で見られる事はないんだ。

故に俺も外見の事だけならば気にする必要はないのだが、俺の父方の一族には稀に特殊な能力(ちから)を持って生まれてくる人間がいるらしい。
その能力(ちから)は人それぞれ異なっていて、俺の場合はこの左目。
塞いでいないと、色んなものが見えたり聞こえたり……。まあ、不思議な事が起こりすぎて正直身が持たない。

けど、想い出をまるであの日に戻ったように体験する事まで出来るなんて初めて知った。
本当に、まだまだ未知数なこの能力(ちから)の事は、知りたいようで知りたくない複雑な気持ちだった。