「心配すんなよ。俺は必ず、会いに行ってやるから」

この頃の俺は子供で、何も知らなかった。

「俺、夢の配達人になる!」

大人になる意味も、自分の未来も、自分の運命も、何も……。

「知ってるだろ?
夢の配達人の白金バッジになれば、どんな大金持ちや身分の高い人にも会える」

だから、何も信じて疑わず、残酷な事を言った。

「俺、絶対に白金バッジの夢の配達人になるからさ!そしたら、レノアが俺を雇ってよ!」

君の笑顔を見たくて、ただそれだけの為に口にした約束。

「あと数年の辛抱だ!
そしたら俺は、ずっとずっとレノアの傍に居る!」

「……っ、本当?」

「ああ!絶対に絶対に、俺が護ってやる!」

「……うんっ!約束、だよ?」

「ああ、約束だ!」

ようやく笑顔になって顔を上げたレノアと、俺は指切りをした。
絡み合う小指と小指の温もりでさえ愛おしいものなのだ、と……この時の俺はまだ知らない。
夕陽を浴びて赤茶色の髪を輝かせる女神のような少女が、自分の唯一無二の存在だって事も……。

子供だったけど、この時に自分の中に湧き上がった気持ちに嘘偽りなんてなかった。
彼女は信じてくれないかも知れないけど、俺は……。

……
…………。