俺が手紙を書くのをやめてからも、レノアからの手紙は暫く届いた。内容は「どうして夢の配達人を辞めちゃったの?約束、忘れちゃったの?」って事。
彼女は俺の活躍をいつも夢の配達人の事が書かれた新聞や雑誌を見て楽しみにしていたみたいだから、そこで引退を知ったんだと思う。

父さんが死んだから、夢の配達人を辞めたーー。

俺は、それをどうしてもレノアに言えなかった。
言いたく、なかったんだ。

普通に生活していれば、俺と彼女が会う事はない。
無視し続けていれば、いつか忘れる。
そう思っていた。

けれど、手紙来なくてなってもう終わったのだと思っていた矢先……。

『夢の配達人を辞めた理由、どうして言ってくれなかったのっ?
お父様(ヴァロンさん)が亡くなったって、何で教えてくれなかったの?!』

何処からか真実を知ったレノアが、俺に会いに来てそう問い詰めてきた。
そんな彼女に、俺は言った。

ーーー言って何になるんだよ?父さんを救ってくれた?
大体、今更なんだよ。お前は今まで父さんの事、知らなかったんだろ?知らずに過ごしてきたんだろ?
……そういう事だよ。俺とお前は住んでる世界が違う。俺達の生活なんて知らなくても生きていける、そうだろ?ーーー

父さんの死を俺からレノアに報せる事はなかったが、仕事で少なからず繋がりはあったし、彼女の母であるミネア様には"父さんの友人だから"と兄が報せを送っている筈だった。

それでもレノアの耳に入る事がなかったと言うのならば、それはミネア様が教える必要ないと口外しなかったという事。
そしてレノアは、外の世界の事なんて知らない程大切にされる姫のような存在なのだという事。

そんなレノアを、俺は追い返したんだ。