レノアを連れて来たとっておきの場所とは、広場の脇にある祭りやイベント時に使う屋台用の道具が保管された小さな倉庫の上。
この倉庫の両側と背後は木に覆われており、倉庫の上の部分には生い茂って葉をつけた枝が上手い具合に生えていて、背丈の低い子供の俺達を隠してくれる。
上に登るには周りの木を使って登る必要があるが、この上からなら鬼の様子が伺えるし、仮に鬼が近付いてきて危険を感じたら相手が登ってくる反対側から降りて、倉庫や木を死角にして逃げる事も可能だった。

問題は倉庫の上に登るための木登りなのだが……。

「平気?」

「っ……これくらい、なんともないもん!」

女の子には少し厳しそうな木登りにも関わらず、レノアは余程見つかりたくないのか俺の後について登ってきた。
俺が手を貸したのは、最後に木から倉庫上に移る時くらいで……。その時の懸命な姿は、今でも心に強く焼き付いている。

何とか鬼が100数え切るまでに身を隠す事に成功した俺とレノアは、声を潜めてただただ時間が過ぎるのを待っていた。