「あんたさ、まだ母さんに言ってない訳?嫌いな物は嫌い、ってハッキリ言わないと……!
今日のメニューなんて、あんたの誕生日パーティーなのに父さんの大好物ばっかりじゃない」

そしていきなりお説教。
7歳年上の姉は、世話焼きでちょっと口うるさい。

けど、すごく優しい。
俺のちょっとした変化にも気付いてくれたり、ダメな事はダメって言ってくれたり、まるで第二の母親みたいで逆らえない。
だから、怒られているのになんだか心地良くて、俺は思わず微笑ってしまうんだ。

「もう、何微笑ってるのよ!私はね、あんたの事が心配で……」

「分かってるよ、ありがと。
それより、姉貴の方はどうなの?ミライさんとなんか進展あった?」

「っな……!」

俺が質問返しをすると、姉の顔は一瞬でボッと赤く染まる。

姉の職業は怪我をした人の応急処置をしたり医師の補佐をする看護師で、現在は夢の配達人の隠れ家に勤めている。
ミライさんって言うのは現在白金バッジの夢の配達人の1人であり、最高責任者(マスター)さんの息子であり、俺の元師匠。
そして、姉の長年の片想いの相手だ。

両親の知り合いだから子供の頃から知っているとは言え、ミライさんは姉の8歳上。
夢の配達人でしかも白金バッジともなると一年間ほぼ休みなしに仕事で各地を飛び回るから、普通に生活をしていたらまず会えない。
けど、看護師研修を終えて就職先が隠れ家と聞いていたから少しは何らかの進展があるのでは?と思っていたのだが……。
姉の反応を見る限りたいした進展はなさそうだ。