誰かと一緒に隠れるという事は心細く感じる事はない分、1人が物音を立てたりすれば見つかる可能性が高い訳で……。普段なら誰かと一緒に隠れたり絶対にしない俺だったけど、この時はレノアの瞳が潤んでいるように見えて、普段とはなんだか違う気がして……。その申し出を受ける事にした。

「いいよ、一緒に隠れよ。
でも、全然見付けてもらえなくて退屈かもよ?」

俺はかくれんぼが、かなり得意だった。
いつ、何処でみんなとかくれんぼをしても大体は鬼が見つけられず時間切れで勝ち。
例え見つかるとしても、いつも最後だったから。
しかも今回は俺の住んでいる港街にある、自分の庭とも言える広場がかくれんぼの場所。誰よりも上手く隠れる自信があった。

けれど、それはつまり隠れている時間が長いという事。
俺は物陰から鬼の様子を伺ったり、いつ見つかるか分からないドキドキ感が嫌いじゃなかったからいいけど、じっとしているのが苦手な人からしたら実に退屈な時間だろうから。

しかし、レノアは俺の心配をよそに言った。

「……いいの。今日は、絶対に見つかりたくないから」

そう言う彼女の何処か悲しそうな表情を見て、俺は子供ながらに"何かあるんだ"って感じた。
それと同時に、レノアがみんなの中から俺を選んで頼ってくれた事が嬉しかった。

「オッケー!
んじゃ、とっておきの場所行こうぜ!」

「!……うん!」

手を取って駆け出したら、レノアがやっと微笑ってくれて……。俺はその笑顔を、ずっと見ていたいって思った。