***

夕方ーー。
学校が終わって真っ直ぐ帰ってきた俺は、自分の家がある建物の1階エントランスでオートロックの鍵を解除しながら溜め息を吐いた。

何だか妙に疲れた。
今朝のリアルな夢から始まった1日は、いつもより長く感じて肉体的というよりは精神的に疲労が激しい気がする。

もうすぐテストが始まるから少し勉強をと思ったが、今日はさっさと夕飯とお風呂をすませて寝よう。
そんな事を思いながら、俺は階段を登り最上階の角部屋である自宅を目指す。

しかし……。
部屋の前に着いて鍵を解除して、ネクタイを緩めながら中に入ろうとした瞬間。

「ただい……」

「「ツバサ〜!お誕生日おめでとう〜!!」」

と言うキレイにハモった男女の声と共にパーン!という音が鳴り響いた。
音の正体はクラッカー。ツンッとした香りを漂わせながら、中から飛び出した紙吹雪やらなんやらが俺の周りに降り注ぐ。

突然の出来事にボー然とする俺の瞳に映るのは、声の主。母さんに良く似た黒髪に黒い瞳の男女。

「……姉貴!兄貴?!」

それはすでに社会人となり家を出て行った、俺の姉と兄だった。
姉は仕事場がこの港街内の為ちょくちょく会うのだが、兄は父の跡を継ぎ少し離れた場所で社長業を営んで居る為会うのはかなり久し振りの事。
そんな兄は嬉しそうに微笑むと、ガバッと俺にハグをする。

「ツバサ〜!暫く見ない間にまたでっかくなったな〜!」

「!っちょ……、ッ〜〜放せ放せ放せ〜っ!!」

何でここに居るんだ?!
てか、誕生日まだ今日じゃねーし!!
とか、色々ツッコミたかったが……。視線の先に姉と共に楽しそうに笑う母さんを見付けて、俺は抵抗をやめた。

そして、観念した。
俺の長い1日はまだまだ終わらないという事を……。