「なら、一分一秒も無駄に出来ないじゃん!
ツバサ、片っ端から食べて遊んで楽しむよ〜!」
「片っ端から、ってお前……」
「言っとくけど、今日はぜ〜んぶツバサの奢りだからねっ!」
「……。ったく、仕方ねぇな」
「へへっ、やった!
じゃあ、最初はこの店からね〜!」
明るく振る舞って、最初はなるべく顔を見られないようにずっと隣に居た。
何とか涙を抑え込んで顔を上げられるようになってからは、その姿や表情を焼き付けるように、私はずっとツバサを見つめる。
レノア、ごめんね。
今日だけ……。今だけ、ツバサの隣に居させてーー……。
……
…………。
「……あ!」
ツバサの奢りで少し遊んだ後、ツバサの奢りでたこ焼きを食べて、その後にツバサの奢りで買ってもらったリンゴ飴を食べながら歩いていると、私の目に飛び込んで来たのは台の上に飾られていた景品。ピンク色の天然石、ローズクォーツで作られたブレスレット。
可愛い〜。
今まで誰にも好きだと口にした事はないし、滅多に身に着けたりしないが、実は私はアクセサリーが大好きだった。
でも、大人しく出来なくて、お転婆で常に動き回っているから邪魔になるってイメージなのか、「ランちゃんはアクセサリーとか興味なさそうだよね〜」って、女友達からよく言われちゃうの。そんな時にサラッと「ううん、好きだよー」とか言えちゃえばいいんだけど、つい恥ずかしくてずっと言えずにいた。
だからいつも、こうやって見てるだけでーー……。
「ーー欲しいのか?」
「!!っ、え……?!」
リンゴ飴代を店主さんに払って、いつの間にか遅れて私の背後に来ていたツバサがブレスレットを覗き込みながら言った。カアッと顔に熱が高まる。
「ち、違う……!」
「え?でも、見てたじゃん」
「そう!見てただけ!それだけだからっ……!」
今まで隠してきた女子の一面を見られて、恥ずかしくて動揺した私は必要以上に否定してしまった。
やだっ……。
こんなんじゃ、もう顔が見られない……っ。
せっかく僅かな時間を楽しく過ごそうと決めたのに、すっかり動揺した私は俯いた顔を上げられない。
すると、更に追い討ちを掛けるように射的屋台の店主さんが話し掛けてくる。