寂しさを紛らわす為に、私もライと共に新たな人生(みち)を歩む事を決めた。
学校を辞めて、9月から夢の配達人の調査員の見習いとして働く事になった。
ツバサが学校を辞めちゃった今、これ以上学校に居る理由もなくなっちゃったし、8月で18歳になる私とライは調査員の試験を受けられる年齢に達する事が出来たしね。

ツバサは夢の配達人。
私とライは、夢の配達人の調査員。

それは、幼い頃から憧れ続けて、夢に見ていた事。
それなのに、…………。

「っ、……ツバサのバカ」

思わず、そう口から溢れた。

彼が悪い訳ではない。
分かってるんだ。
悪いのは、ツバサへの想いを断ち切れない自分ーー……。


「ーーやっと見付けた!」

!!ッーー……え、っ?

まさかの声と同時に背後から頭をポンッと叩かれて、私の胸はドキンッと跳ねた。
"まさか"と思いながらも、それ以上に"こんなにも自分は彼を待っていたのか?"と、疑いたい位の素早さで私は振り返る。

目にした瞬間に、締め付けられる胸。

そこに居たのは、ほんの暫く会っていなかった間に……。一瞬お祖父ちゃんに見間違えてしまう程に大人っぽくなったスーツ姿のツバサ。

「ったく、捜したんだぜ?ポケ電も出ねぇしさ〜」

「!……え?っ、あ……ごめん。
……。じゃなくて!……えっ?な、何でッ……ここに?」

驚きとまさかのスーツ姿に見惚れてしまっていた私はハッと我に返ると、ツバサを見上げて尋ねる。
彼のスケジュールをハッキリと把握している訳ではないが、少なくともこんな大事な時期に地元とは言えお祭りに来て、遊んでいる時間なんてない筈だから……。
けれど、ツバサは微笑って言った。

「何で、て……約束しただろ?」

「え?」

「今年の花火大会はお前と一緒に行く、て。
……て、言っても悪い。1時間ちょいしか、居られねぇんだけど」

……あ、やだ。涙出そー……。

私との約束の為に来てくれた。
目の前で申し訳無さそうに頭を掻く彼が、ボヤッと少し滲みかける。
寂しいからじゃない、嬉しくて……。ただ、嬉しくて、自然と込み上げてくる感情。

好きーー。

グッと飲み込んで、私はツバサの隣に行くと、腕を組むように掴んで歩き出す。