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そして今日。
ツバサ君は見事、約束の第一歩を果たしてくれた。

『レノアを、大切にして下さり……。たくさん愛して下さり、本当に、ありがとうございましたっ』

そしてやっと、彼の笑顔を見られた。
その眩しい笑顔はかつてヴァロン殿がご家族を語っていた時と良く似ていて、その傍で共に微笑んだレノアーノを見た時。私は思った。

レノアーノ(この子)を幸せに出来るのは、ツバサ君以外にいない。
そして何より、将来ツバサ君の口から幸せそうに語られる家族の話にレノアーノが居てほしいと思ったんだ。

そんな未来を想像したら、ついつい幸せな気持ちが溢れて笑みが溢れる。
さて、そろそろ邪魔者は本当に退散しよう、と盗み見をやめて振り返ると……。

「ヴィンセント……」

「!……ミネア」

申し訳なさそうな、罰が悪そうな表情のミネアが立っていた。
彼女の想いは、ずっと知っていた。それでも妻になってほしいと望んだのは私だった。
でも彼女はそんな自分が今でも許せなくて、後ろめたくて……。だから娘のレノアーノに厳しくしていたのだろう。

……けれど、良いんだ。
ヴァロン殿を想う心も含めて、愛してるーー。

「護るよ、ずっと」

「!……え?」

「君も、レノアーノも、レオも、私の宝物だから」

「っ、……ヴィンセント」

目の前で初めて涙を流すミネアを、私はそっと抱き締めた。
初めて、本当に彼女に触れられた気がした。