ずっと実力を発揮せず抑えていたのと、これまで「頭良いからって調子に乗るなよ」てな感じで少しばかり虐めにあっていた我慢がたたって、やってしまった失態だ。

高等部での生活はもう1年もないが、ここはなるべく穏便に済ませたい。


「あ、あのさ……。悪いんだけど、家の都合で放課後はなるべく早く家に帰りたいんだ。
それに最後の試合なら尚更、今まで一緒に頑張ってきた部活仲間と試合に出る方が良い思い出になるんじゃないかな?」

しばし考えた末、トラブルを避けたかった俺はやんわりと微笑みながら大人しい口調にしてそう言った。
本当は「ヤダ」「無理」「断る」って軽く流してさっさと食堂に走りたいところだが、ここは我慢だ。
今まで築いてきた"優等生"としての自分を崩す訳にはいかない。

そんな心境で返答を待っていると、頭を上げた三人のうちの一人が「分かったよ」って呟いた。
その言葉に思ったよりあっさり引き下がってくれて良かった、とホッとする俺だった。が、それも束の間……。

「力になれなくてごめんね。じゃあ……」

「ーーさすが元夢の配達人様。金にならない事に興味はありません、ってか?」

その場を去ろうとした俺にそう言って、三人は周りを取り囲んだ。

「知ってるぜ、お前だろ?
数年前に騒がれてた伝説の夢の配達人の息子って……」

そう言われて、俺の心臓がドクンッと嫌な音を立てた。