……でも。

「……嘘。本当はただ……会いたかったの。
私がただ、ツバサに会いたかっただけ」

黙ったままの俺を見て不安になったのか、呟くようにポツリとレノアが言う。
俺に拒絶される事を怖がっているかのように、笑顔が苦笑いに変わっていく……。

もう、無理だーー……。

「ーー会いたかった」

「!……え、っ?」

好きな女性にそんな表情を見せられて、俺はもう、素直になるしかなかった。
俺の言葉に、予想外だったのか、レノアは大きな瞳を更に大きく開ける。
彼女の事を本当に想っているなら、ここは心を鬼にして追い返さなきゃいけない。……でも、無理だった。

「俺もお前に会いたかったよ、レノア」

「っ、……ツバサッ」

ずっと言えずにいた本音が、漏れる。
涙ぐみながら、でも嬉しそうに微笑ったレノアが抱き着いてきて、触れ合った瞬間。俺の心を覆っていた、ヒビ割れた鎧が飛び散った気がした。
まるで、翼を得た鳥が羽化するように、その殻を破って生まれ変わる。

鳥は、片方の翼だけでは羽ばたく事は出来ない。
俺に足りなかったのは、間違いなく彼女だったんだ。