"父さんの代わり"じゃなくて、俺は俺でいたかった。
でも、自分の力で母さんの涙を止める自信がなくて……。ずっとずっと、父さんになろうとしていた。
母さんに言われた訳でもないのに、父さん似てる(この)方が母さんが喜ぶって思って……、……。

"父さんの死"に誰よりも心を縛られていたのは他の誰でもなく自分だと、俺はやっと気付いた。

自分で自分の口を手で押さえて震える俺。そんな俺にシュウさんはフッと微笑むと歩き出して、すれ違い際に肩にポンポンッと触れる。

「分かってるじゃないですか。
そう、君は君。ヴァロンになんて、なれっこない。私から見たら君は、全然ヴァロンに似てなんかいませんよ」

「っ……!」

その言葉に振り返るが、シュウさんは歩みを止めずに進んで行く。そして、背中を見つめる俺に最後に一言。

「まだまだヒヨッコの君が伝説の夢の配達人(ヴァロン)になろうなんて(はなは)だしい。そうしたいのならせめて、白金バッジを手にしてからにしなさい」

また冷たい口調で言い放って、シュウさんの背中はだんだんと俺から遠ざかって行った。

残された俺は、自分の胸の辺りの服をギュッと握り締める。
ズキズキと痛い、覆っていた鎧がヒビ割れた心。何故痛いのか理由は分かったのに、俺にはこの痛みがどうしたら治まるのかが分からなかった。

……
…………そして、そのまま時間だけがまた過ぎてーー……。