「うっわぁ〜!美味しそ〜!」

「ホントだ〜!美味しそ〜!
……でも、レノア。僕達もご馳走になっちゃっていいの?」

孤児院の先生達がお昼ご飯に握ってくれたおにぎり。それを見て目を輝かせるランの横で、ライが遠慮気味に尋ねてくる。

「ええ。子供達の分はもう取ってあるし、材料はこちらが用意した物だから遠慮しないで」

「やっりぃ!いただきま〜す!」

「!っ、姉さん!」

ライの問い掛けに私が答えると、返答を聞いたランはすぐさまおにぎりを手に取ってぱくり。その姿にライは唖然とした後、少し恥ずかしそうな様子で「まったく〜」と愚痴を溢していた。
元気で明るいラン、優しくてしっかり者のライ。二人の変わらない姿を見て、私は思わず笑ってしまった。

こんなに楽しいお昼ご飯を食べるのは、どれくらい振りだろうかーー?

訪ねて来てくれた幼馴染みと孤児院の中庭の端に座って一緒に食べるおにぎりは、どんな一流のシェフが作る料理よりも美味しく感じる。

会いに来てくれるなんて思わなかった。
もしかしたら、もう永遠に会えないかも知れないと思っていた。
そんな二人との再会が、全てを受け入れて諦めようとしていた私を、再び動かしてくれる事となる。


「あ!……ねぇ、レノア。ポケ電の番号って、聞いても大丈夫?」

周りに誰もいないかキョロキョロと確認した後、隣に座っていたランが私に小声で耳打ち。ランが気にしてくれた通り、連絡先を交換している事が誰かにバレてしまえばそれは不味い事になる。
でも、せっかく、やっと会う事が出来た幼馴染みとの奇跡の時間。それを逃したくなかった私は頷きながら答えた。

「もちろん。番号言ってもいい?」

「あ、ちょっと待ってね〜……」

おにぎりを一旦お皿の上に戻したランが、手を拭いてポケットからポケ電を取り出す。その際、目に写った画面を見て、私は思わずその名前を呼んでしまう。

「!……ツバサ」

ランのポケ電の待ち受け画面。その画像は、ランが左右をライとツバサに挟まれて制服姿で楽しそうに微笑っている写真だったのだ。
ツバサは、不機嫌なのか写真が嫌いなのか、微笑ってないけど……。それでも、"ツバサと写ってる画像"が私は堪らなく羨ましかった。