この世界には、『育みの女神レノアーノの像』という物がある。

それは世界的有名な彫刻家ローレンツが三十年程前に「これが私の人生の中での最高傑作だ」と、現役最後の作品として生み出した美術品。
産まれたばかりの赤ちゃんを抱いた女神レノアーノの周りには、人間、色んな種類の動物、たくさんの植物、そして人間離れ動物離れした悪魔や魔物のような生き物がいる。
それは"女神レノアーノの前では、いかなる生物も平等である"という、平和の象徴で……。争いや差別をこの世から無くす為に創られた。

全ての命を差別なく育む女神レノアーノーー。

自分の名前の由来が、そんな立派なものだと知った時は子供ながらにプレッシャーを感じたっけ。
でも。その重圧は今の方がずっと……。
ーーううん。これから月日を重ねる度に増していく事になるのだろうと、感じている。