と、そのとき。
すいーっとこちらに泳いできた王子が、すぐ傍で深く潜った。
絶対にひっぱって悪戯するつもりだ。

そうはさせるか!

私は足をばたつかせて、王子の手を避けた。

ひょい。
ひょいひょい。


「ふふん♪ マーメイドちゃんを舐めるな……ッ」


舐めていたのは、私のほうだった。
王子に足ではなく手を掴まれて水中に潜らされた私は、遠くにホスニーの飛び込む音を聞いた。


「……」


王子め。
髪を掴んでやろうと伸ばした手も、すいっと絡めとられる。

こう、指を。
なんというか、一本ずつ交差する形で?


「……っ」


唇にキスされた。


「グゴポ……ッ」

「……」


驚いて、泡を吐き出した私に、王子はいつもと違う笑みを残して、離れていった。