「そうだ。ひとつ頼まれてくれないか」

「はい! なんでも!」

「これなんだが……」


今朝整理した寄付金の山の内、花の刺繍が施されたハンカチで金貨が包んであったものがあった。


「これを持ち主に返してきてもらいたい」

「いいですよ」


たしかに、とてもよくできた刺繍で、布もしっかりしていた。
ファイサル船長が誰のものか把握しているという事は、刺繍好きの繊細な女性がこの一座にいるという事だ。私はまだ会ってないと思う。だから、新しい出会いに少し期待してしまった。

そして打ち砕かれた。