「……」


思ってもみない言葉だった。

いつも姉妹の中で引け目を感じて生きてきた。何かを証明しなくては生きている価値がないように感じていた。好きだから勉強は続けられたけれど、能力を伸ばす事にしか自分の価値を見出せなかった。

ただの私が特別。
それは、自分ではとてもそう信じる事のできない、慰めだった。

でもバスィーム王子が本心からそう言ってくれているのはわかる。
彼は、人を大切にする人だ。


「王子が私を見つけてくれたから。だから、特別になれたんですよ」

「そうか」


優しい眼差しのまま頷いて、バスィーム王子が私の頭を撫でる。
あたたかく大きな、たしかな掌だった。