「さあ、踊りましょう」

「……!」


殿下の見初めた女は、ガリガリに痩せた少年のような令嬢だった。
壁に沿って立つ姿には魅力を感じなかったというのに、踊り出したらどうだ。初めて見たはずなのに複雑な振り付けをすぐ理解し、完璧に溶け込んできた。

ルゥルゥの穴を埋めるための補充と言われて、正直なところ面白くなかった。なんならファイサルを殺してルゥルゥと陸地の旅を始めようとさえ考えた。

でも、この子はいい。
この子なら、私も欲しい。

殿下はハレムには行かないしレイスなんか連れて、まったく女気がないコドモだと思っていたが、逆だったのだ。
見る目がある。
 
空の旅にダリヤという薔薇が加わった。
ダリヤはファイサルから金庫番を押し付けられても真面目に働き、一日図書室に篭れば外国語を習得し、レイスをうまくあしらい、殿下には色目を使わない。

もう、なんてイイコ……!

ついちょっかいを出していたら、ルゥルゥが嫉妬に狂った。
私の可愛いルゥルゥが、しなくてもいい心配をして苦悩する様を見ると……興奮した。そういう意味でもダリヤは本当にいい仕事をしてくれた。