「なんて言ってるの?」

「……彼女は、上に住む医者だ。手当てをしてくれる」

「信じるの? あんたさっき刺されたのよ?」


ファイサルを咎めると、医者という女が慌てて医療品らしき荷物を下ろした。震えているのは、寒いせいとは言い切れない。怯えながらも良心でしてくれた事を疑うのはやめよう。


「お前は恐い。あの子に看てもらう。──〝来て。怪我をしたんだ。すごく痛い〟」

「……」


ファイサルが憐れな声で女を呼んだ。女は緊張した様子で荷物を抱え直し、傍に寄ってくる。ファイサルの足の間に跪いて荷物を広げた。小さな懐中電灯を取り上げて傷を照らす。視界を確保するためか、女が被り物をとった。


「……」


私は息を呑んだ。
夜のような美しい髪と大きな青い瞳が印象的な、あまりにも可愛らしい女だった。

あああああッ!
食べちゃいたい!!