「実は我が弟が世界を巡る旅に出たいと言いだした」

「あれをひとりで外にやるのは不安だ」


第三王子の話か。
好奇心旺盛で、王位継承にまったく興味を示さない、やんちゃな三男。国政は兄たちに任せて自由に生きる事を望んでいるのだと、隠しもしない潔さ。我が主の椅子を狙わないだけ可愛いとは思う。


「バスィーム殿下にはレイス殿がついているのでは?」

「そのレイスが貴女を指名している」

「忠誠心、剣の腕、その両方を買われたようだ」


家族代々王家に仕えて来た者同士、確かに日頃の交流はなくても互いに信頼を置いている。だからと言って、第三王子の我儘に私をつきあわせるとは、いい度胸だ。


「バディーア。貴女には長く陰の仕事をさせてしまった」

「どうか休暇と思って、羽を伸ばしてきて欲しい」

「それに貴女がいるとハレムの女たちが相手をしてくれない」

「貴女が不在のうちに妃を選びたい」