膜を裂くような重い一音が響く。
どこか哀愁の漂う煽情的な旋律が、広間の時を止める。

人垣が割れて躍り出た4人の男性は、バスィーム王子、メイムーン、そしてファイサル船長ともうひとり見覚えのない誰かだ。砂漠の国の格好ではなく、シルヴァーニャ・ブライストの正装に身を包んでいた。肌の色がひときわ印象的に映えて、思わず息を呑む。4人とも胸に挿した赤い薔薇を女性に見立て、踊りながら撫でたりキスしたり、流し目で辺りを魅了しまくっている。

とんでもないものを見せられている気分だ。
体が熱くなって、脈が速くなって、変な汗が出てきた。


「きゃああぁぁぁぁっ!」


アリージュお姉様が興奮して叫んだ。
それをきっかけにして、貴婦人と令嬢が歓声を轟かせる。

魅惑的な4人の男性による求愛の舞踊に、広間は熱気に包まれた。