優美な楽の音が流れる中で、集まってくれた人たちがグラスを片手に歓談していた。私はお父様とお母様に挨拶して、お姉様たちと席に着いた。

一緒に旅をしてきたみんなの姿が、ない。
ライラとルゥルゥのいる円卓は、ガラ空きだった。


「……」


わくわくした。
絶対、なにかやる気だ。

注意深く辺りを見回してみると、楽団にブルハーンが加わった。その手にはヴィオラが。レイスが打楽器の背後についた。ガチムチのふたりが黒一色で決めている。

今流れている曲が終わったら、始まるみたいだ。
お母様が私の手を優しく握り、手の甲を撫でた。


「おめでとう、ダリヤ」

「気が早……ん?」


ひとつの扉から道化師一座が普通に入って来た。
普通の、御呼ばれした時の格好。それなりの正装と礼服。

なーんだ。
と、思った瞬間、気づいた。
 
一座の大半が人垣となって、その中心を隠している。

 
「……」


曲が途切れた。
視界の隅でブルハーンがヴィオラを構える。打ち合わせをしていたのか、楽団の弦楽器が一緒に参加するようだ。