「こっち向いてダリヤぁ~!」

「……」


お母様が手を振っている。
 
滞在を伸ばして、私の婚約披露の宴を開く事になった。今日はその日だ。
同じく滞在を伸ばしてくれたアスィーラお姉様が、気合を入れて私を飾り立てている真っ最中。


「あなたはやっぱり黄色が似合うわ。爽やかで、若々しくて、元気で」

「だからって口紅まで黄色にしないでよ?」

「アリージュ。口じゃなくて手を動かして頂戴」


装飾品を吟味して遊んでいるアリージュお姉様は、私の代わりにベールを被ってくるりと回った。


「見てぇ~! ダリヤの真似よ~!」

「ダメよ。私たちは運動神経が悪いんだから、そんなふうに腕をあげてお尻を振ったって無様だわ」

「アミーラまで。いいからチークを取って」

「はい、お姉様」


そして、私は黄色のドレスを着て、少し伸びた髪を襟足にゆるくまとめてもらい、花飾りをつけた。お姉様たちが厳選してくれた宝石で耳と首を飾って、真珠のついた絹の手袋をはめる。真っ赤な口紅を塗ってもらって、んまんまっとして、鏡で確かめる。

今日は余興ではない。
それなのに、私はけっこう、いい感じだった。


「素敵よ、ダリヤ」


お姉様たちと広間に向かう。