ちょうど別の招待客が向かってくるのが見えた。侯爵たちにお父様を任せ、私もそっと離れる。自然と目が王子を探してしまうけれど、耳に入るのはレイスとメイムーンの賑やかな声ばかりだ。気が散るったらない。


「あ」


王子はいいとして、私は見てしまった。

バディーアが家の給仕係にちょっかいを出している。親類や招待客ならあしらえても、使用人はそうもいかない。少し中身の残っているデカンタを持って、困って俯いている給仕係の少女は、私が旅立った後に新しく雇ったようで名前は知らなかった。だから彼女を助けるには、バディーアを止めるしかなかった。


「〝ちょっとバディーア! 家の子に手を出さないでよ。ルゥルゥに言いつけるよ〟?」

「〝あら、ダリヤ〟」

「しっ、失礼します……!」


給仕係が逃げていく。
任務は果たした。