今日は昼間から分厚い雲に上下を挟まれ、雨がぱらつく時間も多かった。
風が強くなければ焦る事もない。
湿った夜空で朧月を間近に眺め、甲板によりかかっていると、後ろからトンッと背中を押された。


「ヒッ!?」


いや、落ちないけど。
恐いでしょう。


「王子!」


絶対にバスィーム王子の悪戯だと思って振り返り、私は凍りついた。


「……ルゥルゥじゃん」

「今なら殺せる」

「やめてっ?」


こんなに恨まれるのは、正直、私のせいではない。