静かな図書室でアルトー語で書かれた童話を読み耽っている。
次に向かうのは森の番人ドワーフが治める小国アルト・シルバスだ。

私も豊かな森林の只中にある国の出身だけど、驚く事にアルト・シルバスの公用語とされているアルトー語は私の母国語ヴァーニャ語とよく似ている。だから少し専門書を読んだだけで、だいたいの仕組みはわかった。

真面目な職人集団でもあるドワーフたちの童話は、多くが説教臭くて堅苦しい。でもその反面、お酒に関する話が多く、楽しみや優しさも描かれている。
つまり、よく働き、よく食べ、よく遊ぶ人たちだ。


「ダリヤ☆」

「はい、順調です」


バスィーム王子はいつも唐突に訪ねてくる。
扉が開くと風が舞い込んできて、古い紙の匂いが香しく漂う。私はその匂いがとても好きだ。


「そうか。ファイサルが呼んでいるぞ」

「え?」