「じゃあ、もう一度」

「王子!」


難なく躱せたのは、王子が無理強いしない人だからだろう。
私は手をもじもじと握り合わせて、わずかに距離をとった。


「私が確信をもって言えるのは、王子に感謝しているという事なんです。私を見つけてくれて、この旅に誘ってくれて、私にとっては人も乗り物も外国も、全部が素晴らしいんです。ずっと楽しくて、ずっと興奮しています。だからこの高揚感を、私が勘違いしているかも……」


言いながら、そんな事はないと思った。
私は王子が好きだ。


「うむ。そういうところも好きだ」

 
王子が言った。


「あぁ……はい」


どうしよう。
こういう時、どうするのが正解なんだろう。

ライラのように?
無理、無理。できない。