ライラは普段以上の可愛い笑顔でファイサル船長と見つめ合うと、誇らしげに向こうの二人と、そして私を見る。気持ちよりも腕が先に動いた。


「ひゅ、ひゅ~?」

「飛べるのは空だけじゃないよ」

「……」


大人の話でしたら、私はまだ、大丈夫です。


「おやすみなさい!」


自慢の身体能力を駆使して素早く立ち上がり、ライラに席をすすめ、船長に敬礼。


「相談に乗って頂きありがとうございました!」


ライラが頷く。
その顎をファイサル船長が、指でくいっとやった。もう見ていられない。

フロアを出て力一杯歩いていると、気づいたらプールサイドに来ていた。
夜風が気持ちよくて我に返る。ちょうどバスィーム王子からキスをされた辺りの水面に、釘付けだ。


「よかった。同じ気持ちで」

「!」


ふり返ると飛び込み台の影にバスィーム王子が立っていた。