ファイサル船長の瞳がすっと逸れて、誰かを見つけたのがわかった。そして一瞬、ささやかな微笑みを浮かべる。誰にせよ、バスィーム王子かもしれない限りは緊張で強張ってしまう。
 
するとファイサル船長は徐に腰を浮かして、相手を見ながら私に言った。


「そうは言っても俺に話せない悩みもあるだろう。相談役に最適な女性が来た」

「え?」


振り向くと、この国の民族衣装を着て髪を結い上げたライラが、無表情のまま私に手を振った。


「……」


振り返す。

いや、すごく可愛い。
幾層もの薄い襞で身を覆う、しなやかで艶やかな民族衣装が、いい意味で似合ってなくて、そこがいい。ライラは一座ではないから、基本的に衣装を着る事がない。そのライラの普段と違う姿に、同性の私でさえ燃えた。