「俺はまだ口きいてもらえない」


溜息まじりに目を擦っている。なんだか、見ていて切なくなった。


「痩せて復帰したいとか本人は考え──」

「それで殿下の話だけど」

「あ、はい」


船長には逆らえない。


「君の気持ち次第だと思うよ。あの人は側室という制度が嫌いだし、女遊びもしない。愉快な人ではあるものの、対人については真面目な人だ。君が、受け止めるかどうか。それだけ」

「……」

「俺に答えなくていいから」


考え込んでしまった私に、ファイサル船長は優しくそう言ってくれた。