っ……うそ。
みんなが、小さくに見える……。

思ったより上まで登って来てしまったようだ。
侍女達が騒いでいる下を見てゴクッと唾を飲み込むと、私は子猫を自分の服の胸元に入れ慎重に枝を掴みながら降りていく。


「っ……だいじょうぶ。だいじょうぶ、だよ?」

子猫にそう声をかけていたけど、本当は自分を奮い立たせる為にきっと言っていた。

恐怖と緊張感で震える手。
動揺で泳ぐ視線が定まらず、判断が鈍った私が掴んでしまったのはあまりにも頼り気のない細い枝。


「!!っ……あ?!」

しまった!
と、思った時には遅くて……。
掴んだ枝はバキッ!と鈍い音を立てて折れた。


っ……落ちる!!

身体が木から離れて、下に急降下して行く感覚。
思わずギュッと目を閉じながらも、私は胸元の子猫を抱きかかえるようにしながら思った。

この子だけは守らないとーー!!

侍女達の叫び声が一瞬で近くなり、地面に叩きつけられる事を覚悟した瞬間。


トサッ……!!

と、心地良い温もりに受け止められた。

……。

何処も、痛くない。
それに、とっても良い香り。
私の、大好きな……匂い。

ゆっくりと閉じていた目を開けると、そこには大好きな笑顔。


「……何をしているのかな?お転婆さん」

私の懐から子猫を取り侍女に渡す、紅い夕陽のような色の髪と瞳の男性。
辺りに居た侍女達がその男性に跪く中、私は彼を見た途端に自然と表情が綻ぶ。


「クー兄様!!」

お姫様抱っこされた私が名前を呼んで首に腕を回して抱き付こうとすると、クー兄様の大きな手がそれを遮るように顔に添えられ両頬をプニプニとされた。


「クー兄様。……じゃないだろ?
こんな高い木に登ったりして、何かあったらどうするんだ!」

いつも穏やかな口調が少しキツくなって、いつもは優しい瞳が私をキッと見つめる。