フィオナは12歳の頃、両親と弟と妹を事故で失っているのだ。それから、フィオナは感情を失ってしまった。

「……オーウェン、ヘレン……」

不意にフィオナの手が止まり、フィオナは弟であるオーウェン・カモミールと妹であるヘレン・カモミールの名前を口にした。



それから数日が経った。フィオナは執筆を、エヴァンは獣医になるための勉強をそれぞれしていた時のこと。

フィオナの家のチャイムが鳴り、2人は同時に顔を上げる。

「……誰だろう」

そう呟いて、フィオナは立ち上がると部屋を出た。廊下を歩き、ドアを開ける。

そこには腰まで伸びた黒髪をポニーテールにした黒目の女性と、女性よりも高い身長の白髪に紫目の男性がいた。

「……あなた方は……?」

無表情でそう問いかけるフィオナに、女性は「私は、シオン・アカツキと言います」と自己紹介をする。

「……」

シオンと名乗った女性の隣にいる男性は、恥ずかしそうに俯いていた。それを見たシオンは、少し呆れたような顔をする。

「サルビア、自己紹介くらいは自分でしなさい」

「わ、分かった……僕は、サルビア・ホープ。と、特殊捜査員……です」

「……特殊捜査員……?」