白い光が消えた後、メルキュールが「寒……」と体を震わせた。当然だ、だって本の世界では雪が降っている。家の屋根には雪が積もり、道路は一面真っ白に染められていた。

「こ、これくらいの寒さ平気だ!軍人だから寒暖差には慣れてる!」

そうカズは強がっているけど、歯をガチガチと鳴らしている。リオンが「強がるなよ」と笑い、魔法の杖を振って呪文を唱えた。刹那、僕たちの周りがまるで暖房が付いているかのように温かくなる。

「あったかい!助かったよ、リオン!」

自分で書いた小説の世界とはいえ、寒いものは寒い。僕がお礼を言うと、リオンは「どういたしまして!」と笑う。

「みんな!この小説の中にいる物の怪は一体だけだ。みんなで協力すれば倒せるよ」

メルキュールがそう言い、僕たちは周りを警戒しながら雪の降り頻る街を歩き始めた。ザクザクと雪を踏み締める音が静かな街に響く。人が誰もいないのだから、音が尚更響いた。