エリカとリオンがはしゃぎすぎて、カズがどこか呆れているような目をしていたけど、楽しい時間が流れていた。その時。

「すごく賑やかなところ申し訳ないけど、お邪魔するよ」

音楽に負けないくらいの声量を出しながら、魔法警察のオズワルドさんが入ってくる。その手には本があり、また誰かが本の中に閉じ込められたんだとわかった。それを部屋にいる全員が察し、賑やかな空気は一瞬にして真剣なものへと変わった。

「頼むよ」

オズワルドさんから渡されたのは、僕の書いた「小さな雪の天使」だった。雪が舞い落ちる街で天使と病気の少女が出会う話だ。

「父さん、母さん、俺たち本の中へ行ってくるよ」

リオンが父さんと母さんに言い、母さんが「気を付けてね」と言う。僕が本の書き出しを言おうとした時、メルキュールがそれを止めた。

「一人、家に残った方がいいと思う。五人は多すぎるよ。本の中にはどんな危険があるかわからない。本の中に閉じ込められた人を助けつつ、自分や仲間の身を守らなければならない。人が多ければ多いほど、負担が大きくなってしまう。だから、一人残った方がいいと思うんだ」