岬の王国は長くは続かなかった。祖父と父が経営する会社が倒産し、五億の借金を背負ったのだ。

あれほど祖父や父にぺこぺこ媚びていた大人たちはもう居ない。岬の周りにも、取り巻きの子供は居なくなった。祖父と父は借金の返済にひいひい言ってて、岬も多額の入学金を納めて入学したエスカレーター式の小学校を途中で転校して公立の小学校に転校した。岬の人生の何もかもが一転した。

そんな時、岬は父親に頭を下げられた。

「岬。この通りだから、宮田さんのお嬢さんのところへ行ってはくれないか?」

彩乃のことだ。彩乃は、会社が倒産するまで、頻繁に猫に会いに来ていた。

「お嬢さんが、お前のことをお気に入りだというんだ。お前がお嬢さんに付いてくれるなら、借金の返済を手伝っても良いと言われているんだ」

岬は小学五年になっており、それが身売りだということが分かる年になっていた。王様だった時代から一転、岬は彩乃の前で傅かなくてはならない身分に落ちぶれたのだ……。