それから三日三晩、考えに考えて、その次の日の朝に岬は彩乃の部屋を訪れた。登校を促すためだ。部屋のドアをノックして中に入る。

「彩乃さん、学校へ行きましょう。僕もこれから、彩乃さんに心から尽くしますから」

岬がそう言うと、彩乃はやっぱり泣きそうな顔をする。

「いいの、もう無理にそんなことしなくて……。今夜お父様が帰ってきたら、執事を止めてもらえるようにお願いするわ……」

くすんと泣いて、彩乃はシーツを顔まで引き上げた。岬はベッドの横まで歩み出て、顔を隠すように引き上げたシーツをぱっと剥がした。

「……っ!!」

「もう強情っぱりはお互い止めましょう。僕も彩乃さんに素直になる。だから彩乃さんも僕に素直になってくれませんか」

昨夜色々考えたのだ。病気だから岬がやさしいと思っていた彩乃は、だったら病気のままで良いと言った。つまり岬にやさしくしてほしかったのだ。……多分、心から。

「……素直に……?」

岬の顔を見て瞬きをした彩乃の目からぽろりと涙が零れた。やっぱり彩乃が泣いているのは心臓に悪い。

「そうです。僕を強引に執事にしたのも、理由があるんでしょう。その理由に僕が納得出来たら、僕はこれからも彩乃さんに尽くしても良い」

彩乃は岬の言葉をかみ砕くようにぱちぱちと瞬きをして、それから、岬くんが……、と言った。