「心愛!」その声に振り向くと岩見先輩が走り寄って来た。
「お疲れ様です!」
「心愛、帰るの?」
「はい。バイトに行こうかと・・」
「じゃあ、途中まで一緒に行こう!」
「あ、でも前のバイト辞めたので・・」
「どうして?」
「う~ん 真剣に色々してみようかと思って、今更遅いかもしれないけれど
少し、恋愛以外で足掻いてみようかと思いまして。」
「ふ~ん。で、なに始めたの?」
「塾でアシスタントです。」
「へぇ~意外な方向にシフトチェンジしたね。」
「そうですか? 楽しいですよ。」
「小学生相手?」
「違いますよ。高校生相手ですよ。」
「え、そうなの・・」
「なんですか?私じゃ無理?とか思っています?」
「いや、そうは思っていないけど・・」
「なんですか?歯切れが悪い岩見先輩って珍しいですね」
「何年生見ているの?」
「主に高2です。可愛いですよ。心愛先生!とか言ってくれて」
「先生とか言われて浮かれちゃっているんだ・・・」
「相変わらず言葉に棘がありますね。そうですよ。浮かれてますよ
こんな私でも少しでも役に立てる、必要としてくれていると
思うと嬉しいですよ。」
「そっか・・そうだね 誰かに必要とされるって生きるのに
必要だよね。頑張れる気がするな 俺も誰かに必要とされないと!」
「フフフ 私は岩見先輩のお陰であの、拗れに拗れた初恋から
脱却出来ましたよ。 居てくれて、聴いてくれて、諭してくれて
有難うございました。」
そこには顔を真っ赤にした岩見先輩が・・
「どうしたんですか?顔 赤いですよ? 風邪気味ですか?
あ、もしかして栄養足りてないとか?何時かのお礼に
牛丼 ご馳走しますよ。」
「はぁ~ お前、初恋を拗らせる痛い子だけじゃなくて
鈍いとか言われない?」
「運動神経は良いんです。鈍いなんて言われる訳ないじゃないですか。
女バスの人間捕まえて鈍いってないわ~」
「やっぱり 拗らすには理由があったな・・・」その声は車の音に
かき消されたが、それで良かった。
鈍いくらいの方が変な虫が斉木の周りには付かないと・・岩見は思ったから。
この鈍い心愛が授かり婚をするのは、何年も先のお話。
<了>



