幼馴染に恋をして(心愛ver)

待ち合わせをした大学のカフェは朝というのもあってか、人はまばら。
胡桃ちゃんはもう、窓際の隅の席に座っている。
「ゴメンね。私が会いたいって言ったのに遅くて」
「私の方が大学から近いから・・それに凄く嬉しかったから。
走ってきちゃった。」
あ~こんなに優しい友達を私は・・そう思うと瞳が霞む・・
「胡桃ちゃん。今までごめんなさい。」
「へ? なに?」
「胡桃ちゃんが私に藤原の事を忠告してくれていたのに・・
挙句の果てに言われるのが嫌で距離を取って。本当にごめんなさい。」
「・・ほ 本当だよ・・寂しかったじゃないか。」と言って下を向く・・
(ごめん。泣かせて・・)
「私ね。藤原に嫌われた。藤原の一番大事にしている人を傷つけた。」
「・・・」
「もう、知っていた?」コクんと頷くのが見えた・・
「そっか・・知っているよね。 
胡桃ちゃんは何時から藤原の気持ちに気が付いていたの?」
「私達が高1の時に、二人が一緒に登校して騒然とした後に、
心愛が二人の登校を目の当たりにした帰り・・」

記憶を辿る・・あの日の痛みを思い出した・・
そう、トイレに籠ったんだ・・

「あの時、翼に確認すると心愛に話したじゃない、だから
部活が終わるのを待っていたの。
そうしたら森さんも一緒だったから声かけられなくて、
駅まで三人の後ろを着いて歩いて・・
藤原の彼女を見る眼が、髪に触れる仕草が切なかった・・
好きなのに、触れたいのに、我慢しているようにしか見えなくて。
それに、翼にも釘刺された。
その忠告を無視した態度をとった事もあるんだけれど・・
その時の藤原の行動を見て、次は無いなって思う位だった。」
「次は無いな?」
「そう、次に私が森さんに酷い態度をとったりしたら、
藤原もだけれど翼も私を許してくれないと思った。
彼女、良い子だよ・・・」
「うん。今なら解る。」

そう、彼女は藤原の一番近くに居て、何でも許されるのに、
ベタベタする事もしない、これ見よがしに教室に訪ねて来る事も、
彼女面する事もしなかった。
だから余計に信じられなかったのだけれど、
ナイフで抉られるような思いはしなかった。
藤原の立場とか色々配慮していたのかもしれない・・
王子を独占出来る自分を、彼女なりに歯痒かったのかもしれない。

「ねぇ、心愛 藤原って王子って呼ばれているけど、
それって幸せだと思う?いつも誰に対しても同じ様な態度で、
感情を露にせず、色々な女の子の告白を相手が傷つかない様に断って、
私、三人の後を追いかけた時に、藤原の森さんに向ける笑顔が眩しかった。
あれが素の藤原なのかと思うと、心愛の事は友達だけれど、
藤原も幸せになって欲しいと思ってしまったんだ」
「うん。そうだよね 胡桃ちゃんは私を傷つけないように
言ってくれていたよね。それなのに気が付かないフリをしいてゴメンね。
10年近く片思いしていたから、完全に吹っ切れては居ないけれど、
もう、藤原を追い求めるのは止めた。」
「だから今までの事、全てごめんなさい。もう一度私と友達になって下さい。」
そう言って手を差し出した・・
(握り返してくれなかったらどうしよう)ドキドキする心臓。

「心愛、私はズーと友達だったよ」
その言葉に私の涙腺は崩壊した。
そして胡桃ちゃんも・・

朝の大学のカフェで女子二人が抱き合っている姿は少し異様で
目立っていたらしく、午後の授業の後に岩見先輩に
「今日も目立っていたね~」と言われてしまった。