幼馴染に恋をして(心愛ver)

終焉

桜が咲き綻び、私以外全ての人が、空気をもが、新入生を歓迎していた・・

キャンパスであの子を見かけたのは4月に入って暫くたってからだった。

あの子は私が知っていた高校生の時とは雰囲気も、
髪型も、全てに面影は残っていなかった。
髪の毛は腰まで伸びていて、
洋服も女の子らしい優しい雰囲気の洋服を着ていた。
一目でハイブランドと解るような・・
自分の格好が急に恥ずかしくなった・・
そう、私はファッションも止まっていた・・

そんなある日キャンパスのベンチであの子が読書をしていた。
その姿は昔、朝の教室で目を奪われた藤原の読書姿と重なった。
自分で重ねたくせに私はイライラした。

気が付くとあの子の前に立って、見下ろしていた。
手元が陰ったからか、その子は顔を上げる。
その仕草さえ藤原と重なった。

その子は一瞬怪訝な顔で私を見たが、
直ぐに「斉木 心愛さんですね」と・・
その不意打ちの言葉に、何も言葉が出なくて、立ち竦むだけだった。

「お話しをするのは初めてですよね。私 森 杏那です。」

(知っている・・)

「私、斉木さんの事を昔から知っています。」
「???」
「海斗と小学校の時、海斗の隣を歩いていて登校していましたよね」

(知っていたの?)
(海斗、海斗と連呼しないで!)

「私、そんな斉木さんに嫉妬して、海斗に泣いて駄々を
こねた事があるんですよ。」と屈託ない笑顔で話す。

私はイライラがマックスになり

「駄々こねたって解っているなら、そんな子供の時にした約束で
藤原を縛らないで、いい加減に解放してあげたら!」

自分でも吃驚する位低い苛立った声・・

「えっ・・」
「解っているんだったら解放してよ!」と怒鳴りつける・・
「子供の頃の約束で、なんの努力もしないで、
当たり前のような顔をして隣に居るのを止めてよ」

彼女がハッとした顔をする
その視線は、私を通り越して見つめている。

「斉木・・」その声の持ち主は・・振り返らなくても解かる。
「藤原・・」私はユックリ振り返る・・

そこには静かに立つ藤原が・・

「斉木、勘違いしている。杏那を小さい時にした約束で
縛っているのは俺の方・・大学生になって、
一人でマンションに居たって別に問題なんて無い・・
むしろその方が普通だ。それを毎日杏那の家に行っているのは、
俺が杏那の側に居たいから、俺が縛っているんだ」

「海斗・・そんな事無い」
小さな声だけれど、ハッキリと藤原に対する愛情がこもる声。

でも、認めたくない私は
「そんな・・だって、子供の時の約束を守っているって・・」
「守っているよ・・でも、その約束が無くても俺は、
杏那を毎朝迎えに行っていた。杏那が他の異性を意識しないように、
何時も一緒にいた。だから縛っているのは俺。」
「どうして?どうして?何でその子じゃないとだめなの?」

私は半分泣きながら藤原に詰め寄った。

「斉木はどうして俺なの?」
「それは・・好きだから」
「俺だって同じだよ 杏那が好きだから」
「・・・」

そうだった。単純な事だった・・・
前にクルミちゃんに言われたことを思い出した。
「恋心を誰も止められない」と・・藤原も止められなかったのだ。
その相手は私ではなかっただけ・・
私はそこに泣き崩れ落ちた・・・
じゃあ私の恋心はどうしたらいいの?
私が藤原を好きで、あの子になる為に頑張った、この何年間は何だったの?
苦しさと、悔しさと、切なさが全て入り混じった涙がとめどなく頬を伝う・・
それを目の前に居る大好きな人は、優しく慰めてくれる事も無く 
ただ、戸惑いの眼を私に向けている・・

惨めだ・・
誰も私を好きになってくれない・・