「私、もう少し考えてみたいんです。ここで竹内君に頼ってしまったら、私は甘えてしまうかもしれない。我儘言って、すみません。」

「そうか、分かったよ。じゃあ、今日はひとまず解散にしよう。野崎さんも一晩、考えてみて。
でもね、時には誰かに頼れる強さも必要なんだよ。僕は、奥さんに頼りっぱなしでよく怒られるけど。」

「ありがとうございます。」

『頼れる強さ』か。
今まで、そんな風に考えたことなかったな。

頼らないことが強さだって思ってた。


私はデスクに座り、もう一度、図面を隅々まで確認する。

それから、会社のデータベースにある内装資料を一つずつ確認していく。何か、ヒントがあるかもしれない。

そして、見つけた。

設計はほぼ素人の私だから、耐震性など細かいことは分からない。でも、これなら今以上に素敵な空間に仕上げられるんじゃないかと、その図面に惹きつけられた。

その図面に記載されていた設計者の名前は『竹内隼人』だった。

近くにいなくても、結局、私は竹内君に助けられるんだ。

ふと気が付くと、もう日付が変わろうとしていた。