確かに、竹内君は昔から優しかった。

入社した時の新人研修でも、コネ入社だと周りから敬遠されていた私に、最初に話しかけてくれたのも、他の同期と上手く溶け込ませてくれたのも竹内君だったことを思い出す。

「本当は知ってるよ。竹内君が昔から優しいことは。何度も助けて貰ってるし。私は頼もしい同期がいて、幸せだよ。よし、もう一回、乾杯しよ。」

私は、ボトルでワインを注文した。

「そんなに飲んで大丈夫か?明日も忙しいんだろ?」

「大丈夫。今日は竹内君と久々に会えて嬉しいんだもん。」

「そうだな、久々の再会に乾杯だ。」

私達は、それから十分に酔っ払うまで飲んだ。
それから、竹内君は私をいっぱい『優香』と呼んだ。
多分、面白がってだけど。

私の記憶は、『隼人』って、竹内君の名前を呼んだところで途切れた。
何故、そう呼んでしまったのかは記憶にない。