翔くんに置いてけぼりにされないように、大人になりたいと思ったばっかりなのに。


あたしは自分の言動に後悔して、俯いて目をぎゅうっとつぶった。


すると、翔くんはあたしの顎をくいっと持ち上げた。



「…緋奈が心配することは、なんもない。」



ちょっと不満そうにそんなふうに言った翔くんに、罪悪感が生まれた。


疑ったわけじゃないの…!



「…ご、ごめん…!」


「…あくまでも客だし、俺には緋奈だけだから。この先もずっと。」



へ…?


あたしが、翔くんの言葉に目を見開いて口をぽかんと開けていると。


翔くんはあたしに、お母さんからもらったクッキーを食べさせた。



「…っん」



…クッキーの甘さがじわりと口の中に広がる。


このサクサク感がたまらなく、美味しい。


翔くん…あたし…だけ、って言ってくれた。


へへ…嬉しいや。