「バイトで、女のお客さんいっぱい来るし。従業員にも主婦さんとかいるし。」


「………そ、そうなんだね。」



たしかにそうだ、うちの学校とは違って、バイトなら女の人ともたくさん関わることになるよね。



「過去のことは…もう気にしてないと思ってたけど、思い出すとやっぱり今でも嫌だったと思うう。…けど、過去に囚われたままな俺もダメなんだ。」


「………。」



翔くんのまっすぐな瞳に、あたしはキュッと胸が締め付けられた。


翔くんは…乗り越えようと、成長しようとしていたんだね。



「あくまで従業員と客としてたけど、女性と関わることで、嫌悪感が少なくなってきたことも確かなんだ。」


「…そっかぁ。」


「バイト始めてから俺、ちょっと考え方が大人になったのかもな。前までの俺だったら、緋奈のお母さんにさっきみたいな挨拶もできなかったと思うし。」