「あのさ、隼人。か、彼氏って…、」
「はあ?冗談に決まってんだろ!俺がお前の彼氏とかありえねーし。」
「なんでそんな冗談を…!」
「お前が変なヤツから告られてたから。」
「中沢くんは変なヤツじゃないよ!」
隼人は、唇の端を釣り上げて、口だけで笑った。
「お前、あいつの名前だって知らなかったんだろ?」
「それはっ…!でも!私が誰に告られて誰と付き合おうと、私の勝手でしょ?!隼人が勝手に口出さないでよ!」
そこまで言い切って、私ははっとして口を押さえた。
隼人が、泣きそうな顔をしていた。
まるで、泣き笑いのような、なかば諦めの混じった苦笑のような。
彼は、
傷ついたような表情をしていた。
「は、隼人…。」
隼人は、自嘲のような笑みを浮かべる。
「そうだな…。お前が誰と付き合おうとお前の勝手だ。変に口出して悪かった。いいじゃん、中沢と付き合えば?俺にはカンケーねーから。」
そう言うと、さっさと教室を出ていこうとする。
私は、隼人に何も言えずにいた。
なんだろう、この感じ。
すっごく胸が痛い。
寂しい。
泣いてしまいたい。
「あ、そういや音楽室の掃除があるんだっけ?」
隼人はそう言いながら私の方を振り返り、その表情を制止させた。
「えっ…何、お前泣いてんの?」
隼人が慌てた様子で私に近づいてくる。
「俺、そんなにひどいこと言った?音葉…。泣くなよ…。」
「泣いてなんかない。」
私は、頬を伝う涙を拭うと、教室を飛び出した。
「音葉?!おい、どこ行くんだよ?」
隼人が何か叫んでいたが、かまってはいられなかった。
今は、1人になりたい。
隼人と同じ空間にいたくない。
隼人といると、自分が壊れてしまいそうな気がしたから。

