「クソ……っ!」





苛立ちをぶつけるように、思い切りドアを蹴飛ばした。
鉄製のそれを人間の足でどうにか出来るわけもなく、俺はジンとする足の痛みに悶える。
身体が冷えきっているせいで余計にジンとした。





「京さん……」






俺は少し離れたところにいる彼女に近付く。
頭を打ち、気を失っている彼女はピクリとも動かない。
手を首筋に当てれば、脈はある。
ただ弱く、身体が冷たい。
幼なじみの死の直前によく似ていた。





動揺で呼吸が乱れる。
恐怖で身体が震える。
焦りで心臓の音がうるさい。
――落ち着け、と自身に言い聞かせるが、落ち着かない。






誰が目の前でまた死んでしまう。
俺にはやっぱり、正義のヒーロー(警察官)は無理だったのだろうか。
誰かを守りたい、助けたいなんて気持ちだけではなれなかったのだろうか。
俺は誰も守れず、助けられないのか――?





「お前だけは絶対に許さない……っ」





俺と彼女しかいない密閉空間だから叫び声が虚しく聞こえる。
それでも、叫ばずにはいられない。
俺はアイツを許さない。
アイツのせいで何人もの人が死に、何人もの人が罪を犯した。
アイツがいなければ――。






「絶対許さないっ!」






俺はお前だけは絶対に許さない。
絶対に罪を償わせる。
例え、それが許されるやり方じゃなかったとしても。
俺自身の《理性》が《本能》に負ける形だったとしても――。