涙が止まらない。
望んでも望んでもなかなか出来なくて。
漸く出来たのに……。
お腹に触れる。
そこにはこの前まで新たな命が宿っていた。




「ごめんね……。ちゃんと産んであげられなくて……」





この世に生まれてくるはずだった新たな命。
でも、その命はこの世に生まれる前に消えてしまった。
この手で抱いて、愛して、育てることを楽しみしていた。
苦労はあるだろうけど、彼となら乗り越えられると思っていた。






「俺は君がいてくれれば良いから」





彼は優しい人だ。
子供好きで、私との間に出来た子供を抱くことを楽しみにしていた。
それなのに、なかなか子供が出来なくて。
出来なくても彼は何も言わずに私の傍にいてくれた。




だから、子供が出来たときは凄く喜んでくれた。
女の子かな?男の子かな?
何て漫画みたいなことを言っていた。
まだ性別も分からないくらい小さいのに、彼はお腹に耳を当てていた。





それなのに、子供は――。





「アイツのせいで……」





アイツが憎かった。
子供が出来たから辞めたいと望んだのに、辞めさせて貰えなかった。
絶対安静を医者から言われたときも仕事に来いと言われた。
結果、子供は――。





すると、スマホが鳴った。
またアイツからの連絡かと思ったけど、見知らない番号だった。
仕事柄誰から電話が来るか分からないくから知らない番号でも出るようにしている。
でも、今思えば出て良かった気がした。





『《傲慢》と《憤怒》』






そんな言葉と共にアドバイスをくれた。
アイツを殺すための。
私はその人のこと神様だと思った。
子供を失ったとき、この世に神様なんていないと思っていたのに。






《ペルソナ》。
この人はアイツを恨む私の前に降り立った神様だと思った――。